大賞受賞自治体の取り組み紹介
ふるさと納税を通じて生まれたストーリーや地域で頑張る人を表彰する、ふるさとチョイスAWARD。
ふるさとチョイスはAWARD2021で大賞を受賞した自治体を訪れ、地域の活動やそこで暮らす人たちの想いを伺いました。
今回は島根県海士町の取り組みをご紹介します。
未来につながるまちづくり部門 大賞 島根県海士町「ないものはない」一人一人が挑戦できる島へ
「ないものはない」小さな離島
島根県海士町(あまちょう)は、島根半島から約60㎞離れた日本海の沖合に浮かぶ隠岐諸島の島の一つ、人口約2200人の小さな離島のまちです。高速船やフェリーに乗船し、本土から2~4時間で島に到着します。暖かい対馬海流の影響を受けた豊かな海と、名水百選に選ばれた豊富な湧水に恵まれ、人々は季節ごとに漁業、農業と仕事を変えながら暮らしを営んでいます。島のスローガンとして掲げられた「ないものはない」という言葉には、「なくてもよい」と「大切なものはすべてここにある」という二つの意味が込められています。「便利なものはないが、必要なものは自分達の知恵と想像力で創り出す」この島らしい生き方や価値観を肯定する言葉です。
島の未来に投資する 未来共創基金
海士町では、一つ一つの産業が重要な意味を持って島の暮らしを支えています。さまざまな仕事を人々が複業として共有するスタイルは島の産業の特徴ともいえます。海士町では、魅力・活力ある仕事や役割が創出され、人財が島に還流し続けることをヴィジョンとした「未来共創基金」を設置しています。ふるさと納税の寄付金の一部を原資としたこの基金は、島の未来につながる魅力的な挑戦に対して審査を行い、事業が動き出すまで官民が連携して挑戦者に伴走します。申請条件は「海士町の未来につながること」「500万円以上の申請であること」。個人の利益ではなく、その挑戦が島の未来につながるものかどうか、その熱量と本気度が問われます。
海を好きになる マリンボート事業の挑戦
未来共創基金に手を挙げた二つの事業が今、未来に向かって走り始めています。町内で飲食店を営む傍ら遊漁船を出している宇野將之さんは、海士町の魅力である海を域外の人にも楽しんでもらおうと、海を好きになるマリンボート事業を申請。「町内のさまざまな人が交代で船長となり、域外の人に自分達の言葉で海や島の楽しさを伝えてもらいたい。そしてそれが新しい仕事として島の人々の収入につながれば」と宇野さんは言います。「域外の人だけでなく、海士町の子どもたちや若者にもマリンボートを通じて隠岐の海の美しさを知ってもらい、この島を誇りに思ってもらえたら。」さまざまな人に海や海士町を見つめるきっかけをつくろうとマリンボート事業は動き出しています。
海を豊かにする ナマコ事業の挑戦
ナマコ漁師会の宮﨑雅也さんは海を豊かにするためのナマコ事業を申請。ナマコは海底の蓄積物を食べて分解し、生態系豊かな海をつくる「海の掃除屋さん」と呼ばれており、ナマコを増やしていくことで海の環境維持につながると宮﨑さんは言います。また、安定した価格で取引される貴重な資源でもあり、ナマコ漁を海士町の産業として確立できればと考えています。
「この事業をきっかけに、海の生態系や漁獲量について地元の漁師たちが主体的に考えていく風土をつくり、自分達で水産資源を守る意識を高められたら。」持続可能な海と漁業を目指し宮﨑さんは挑戦しています。
共に考え創り出すこと
海士町ふるさと納税担当職員の松田昌大さんは「未来共創基金の最大の特徴は、魅力的な挑戦を持った人を官民が連携し伴走する体制にある」と言います。こんなことができたら、という挑戦の種を取りこぼすことなく、伴走者がさまざまな視点からアドバイスを行い申請者と共に事業を形成し、本音で話し合い、考え、練り上げた事業計画を一緒に基金へ申請します。実際に事業への採択が決まった瞬間は、申請者のみならず基金を運営する委員会関係者まで涙を流したそうです。「島の未来につながる事業を全員が本気で考え、その挑戦が走り出したことにみんなの心が動いたのです。」
一人一人が主役になれる島へ
海士町には昔から、域外から訪れた人をあたたかく迎え入れる風土があります。実際に人口の約2割は域外から移り住んできたIターンやUターンの人たちであり、このオープンでフラットな風土が、人々の新しい挑戦を後押しする風を呼び込んでいます。未来共創基金の今後の広がりについて、松田さんはこう語ります。「高校生や大学生であっても、島の未来を思い描いている人であれば、誰でも使えるひらかれた基金でありたいと思います。」便利なものはない、けれどそこには、一人一人が挑戦でき一人一人が主役になれる、この島ならではの豊かさがありました。
この地域であなたが
未来に残したいものとは?
挑戦し続ける
熱量と度量
松田昌大
島根県 海士町
島根半島から約60km、日本海に浮かぶ隠岐諸島の一つ「中ノ島」にある町。人口2200人、1島1町の小さな離島。暖かい対馬海流の影響を受けた豊かな海と、名水百選に選ばれた豊富な湧水に恵まれ、自給自足のできる半農半漁の島。「ないものはない」をスローガンに掲げ、創造や挑戦を大切にする島ならではの豊かな価値観が築かれている。