2022大賞受賞自治体の
取り組み紹介

ふるさと納税を通じて生まれたストーリーや地域で頑張る人を表彰する、ふるさとチョイスAWARD。
ふるさとチョイスは、アワード2022で大賞を受賞した取り組みの魅力をさらにご紹介すべく
実際に自治体を訪れ、地域の活動やそこで暮らす人たちの想いを伺いました。
今回は、未来につながるまちづくり部門で自治体職員の藤井裕紀さんに発表いただき、
大賞を受賞した茨城県境町の取り組みをご紹介します。

全国初の自動運転スが叶える

誰もが生活の足に困らない町づくり

未来につながるまちづくり部門 大賞 茨城県境町

大自然と近未来を同時に体験できる町

茨城県の西端に位置する境町。風光明媚な田園都市ですが、町は少子高齢化が進み、財政も厳しい状況でした。しかし2014年、橋本正裕氏が町長に就任して以降は、あらゆる面において驚異的なV字回復を遂げています。ふるさと納税額5年連続関東1位、日本最大級「利根川大花火大会」の開催、隈研吾氏設計による文化施設や飲食施設の建設、自治体としては全国初となる公道での自動運転バスの定常運行開始など、境町のめざましい発展を示す事象は数多くあります。自然豊かな住環境を守りつつ、最新のテクノロジーで利便性も追求する……異なる2つの魅力を備え、新しいことに挑戦し続けている自治体です。

01 きっかけはネット記事 自動運転バスとの出会い

2020年11月、自治体としては全国初の公道での自動運転バス定常運行がスタートした茨城県境町。「きっかけは、自動運転バスの実証実験を報じるネット記事でした」と話してくれたのは、境町役場の地方創生課に勤める藤井裕紀さん。バスの導入に尽力したチームの1人です。

町内に鉄道路線がない境町では移動手段として自動車が欠かせず、高齢者の免許返納が進まないことが課題でした。解決法を模索していた2019年11月、ネット記事を読んだ橋本町長は、翌月には自動運転の実証実験を行っていた企業の社長と面談。さらにその翌月には、町議会でバス導入のための予算承認を得たといいます。「これこそが町民の困り事を解決する手段である」という認識を議会全体で共有できたことが、異例のスピード決裁の大きな要因でした。

ふるさと納税を活用することにより、早速3台の自動運転バスを導入した境町。まずは町民向け試乗会を実施し、町民の声を取り入れながら実用化に向けた調整が本格的に始まりました。

02 発案から1年のスピード実現 全国初の定常運行がスタート

「ルート選定後には、町民の方々にバス停や渋滞緩和の待機場所を提供していただくため、一軒ずつお願いに行きました」と藤井さんは振り返ります。断られることも覚悟していたそうですが、皆様快く引き受けてくれたそうです。
そうして、いよいよ自動運転バスの定常運行が始まりました。それは、町長が記事を目にしてから、たった1年後のことでした。

停留所スペースを無償貸与している松本文具店のご夫妻は「町民がより安全に、より便利に暮らせるようになることを願って協力している」とのこと。自治体と地域住民の想いが一体となり、早期実現に結びついたのです。
バスの維持費は、主にふるさと納税の寄付金から捻出しているそうです。寄付者の方々からも「未来に繋がる取り組みを応援できて嬉しい」「いつか必ず乗りに行きます」という嬉しい声がたくさん届いているとのこと。町内外いろいろな人たちの想いと期待を背負って、バスは今日も走っています。

03 自動運転バスがもたらした まちの嬉しい変化とは

バスを利用する町内の方からは「通院が楽になった」「雨の日でも買い物に行けて助かる」など、評価の声が続々と上がっています。

地域の高齢者の方々が集う「いきいきクラブ」のメンバーは、バスを利用して町内の友人との交流を楽しんでいる様子。「バスのおかげで気軽に出かけられるようになり、喫茶文化が復活しました。集まる機会が増え、みんな元気になりましたよ」と会長の寺山さん。

乳幼児を子育て中の黒滝さんは「散歩の途中で子ども達がぐずっても、バスに乗ると機嫌を直してくれるので助かってます」と笑顔。

バスの停留所にある「葵カフェ」の店長・上埜さんも「町が注目され、観光客の方が増えました。集客にも繋がってありがたいです」と話してくれました。自動運転バスの運行は、町に利便性と、人々に明るい変化をもたらしたのです。
導入から約2年半、これまでに大きな事故やトラブルは起きていません。何より、境町がメディアに多数取り上げられるようになり知名度が大幅にアップしたこと、他の自治体からの視察や観光客が増加したことは大きな副産物。その成果と経済効果は期待以上のものでした。

04 困っている人がいるから助ける そのためのチャレンジ

運行開始以来、ルートの延長や早朝運行の開始など町民の要望に応えて改善を続けてきましたが、今後は路線のさらなる拡大を検討しているとのこと。「現在の2路線に加え、町中心部以外の地域にも範囲を広げる予定です。採算が取れるかどうかよりも、“困っている人がいるから助ける”というのが境町のモットーであり、皆様に“横に動くエレベーター”としてご活用いただきたいので」と藤井さん。

境町といえば、全国で初めてふるさと納税の代理寄付(被災した自治体に代わり、被災していない自治体が寄付を受け付ける制度)を実施し、熊本地震の被災地に約1億1000万円の寄付金を届けたという実績を持つ町。このときは、40を超える自治体がこの取り組みに賛同し、境町に追随して代理寄付を行いました。
この代理寄付というシステム自体、橋本町長が「困っている被災地をなんとか助けたい」と考えた結果生まれた施策なのだそうです。「困っている人を助けるために、前例のないことにも果敢にチャレンジする」という町長のこの姿勢は、今や境町全体の政策として定着しているのです。

自治体担当者が語る「今まで」と「これから」

住民の困り事を解決し
町の魅力化に貢献していきたい

茨城県境町 自治体職員 藤井裕紀

自動運転バス運行事業は、行政だけではなく、町民の理解と協力があってこそ成り立っています。また、ふるさと納税寄付者の方々から寄せられた応援のおかげで実現することができました。「町民の困り事を解決したい」という想いから始まった境町のチャレンジですが、多くの方々に支えられたこの成功事例を他の自治体にも展開し、日本全体の課題解決につなげていくことが今の目標です。
また今後は、自動運転バス以外にも町の魅力化につながる地域資源を増やしていきたいと考えています。境町には新たに、国内初となる世界大会が開催可能なレベルの常設アーバンスポーツ会場や、オリンピック基準のホッケー場などのスポーツ施設が誕生しました。こういった施設を観光や移住の促進に結びつけていくことも大きな課題。これからも町に新たな価値を生み出し、未来に向けた豊かな町づくりに貢献していければと思います。

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